デジタルアルバムのご注文を受けると、撮影も当然デジタルカメラで行います。ネガからスキャンしてデジタルデータを取り出すことも出来ますが、高品質なデータを仕事で使えるほど迅速に抽出するには数百万円のドラムスキャナーが必要で、さもなければ1コマスキャンするのに5分くらいかかるコンシュマースキャナーを使わざるを得ません。実際イースターエッグでも2003年の春まではネガで撮影、スキャナーでデータ起しというプロセスでデジタルアルバムを作成しておりました。その時間的労力といったら!!
やはりデジタルアルバムにはデジカメの方が圧倒的に相性がいいです。なぜなら撮影から印刷までのフローが一貫しているからです。撮影時の色空間とコンピュータでのモニタ色空間と、そして最終的な印刷時のCMYK色空間への変換が全て計算で成り立つと言うところに、デジタルのアドバンテージがあると思います。これを有意義に生かすためにはやはりネガからのスキャンというのはナンセンスでしょう。色を一致させるだけでも四苦八苦で、ネガなら手焼きの方が全然いいや。となってしまいます。
ちなみに過去に何度も私がお話ししてきているので、耳にたこができるほどお聞きになっている方も多いと思いますが、初めての方もいると思いますので今一度RAWについて。
私どもではデジタルでの撮影時、RAWモード(色空間はadobe-RGB)で撮影します。RAWというのはまさに生のデータです。たとえばカレーを作る特の材料の状態といってもいいと思います。ここからどう調理してカレーを作って行くのか、それは料理人の腕次第です。ちなみに普通皆さんの撮影する事の多いコンパクトデジカメはJPGというモードが普通です。これは言い換えればレトルトカレーです。このパックを更に調理することは普通あり得ません。そうです。JPGというものは本来完成データなのです。ですから、これをパソコンでいじると言うことは危険なのです。大抵というか絶対になのですが、データ的には劣化の方向でしか手を加えることが出来ません。人の目をごまかすことは場合によっては可能かもしれませんが、データを見れば破綻している場合がほとんどです。
話は戻ってRAWデータ。カレーの材料をどう料理するのかは人の手ですが、調理器具はいろいろです。たとえばイースターエッグでは、通常はフォトショップとアドビCAMERA-RAWというソフトを使って調理します。(RAW現像といいます)このCAMERA-RAWは非常に汎用性が高く、どこのメーカーのデジカメでもほぼ違和感なくいい味にしてくれます。しかし細かな味付けが苦手なこと、そして各メーカー毎にカメラが隠し持っている味を引き出すことにおいては少し不利な場合もあります。
なのでNIKONのカメラでは、NIKON-Captureを使うことも多いです。これは名前の通り、NIKONのRAWデータを現像するには最適な”調理器具”で、これ以上はないという調理をしてくれます。欠点はあまりにプロフェッショナルすぎてややもすると反って手間がかかると言うことでしょうか。その他にもCANONなら「DPP」、RAW現像専用という異色感ただよいつつデジタルノイズにめっぽう強い「SILKYPICS」ーなどなどを使い分けています。
そして昨年暮れより、アップルより突如出てきた「Aparture」も仲間に加わりました。これを仕事の実践で投入はまだしていません。というのはなかなか癖のある”調理器具”だからです。RAW現像というよりもその前段階である写真セレクト時の仕事の軽減に役立つと思ったのですが、今のところその線でも明確な路を見いだせていません。しかしプレゼンには格好のソフトで、これはある意味オープンキッチンなのかもしれません。本来厨房はそんなに人の目にふれることは少ないと思うのですが、オープンキッチンではそれをさらします。揚げ前天ぷら(天一また行きたい!!)やお寿司屋さんもそうですよね。
RAW現像がデジタルでの「手焼き」に相当するものとして私が位置づけているなら、モニターは本来暗室に相当し、それもまた普通、人の目に触れる機会は多くありません。
Apaeture、見ているだけで結構楽しいですよ。是非アトリエにお越しの際は、「Aparture(アパーチュア)見せて!」と聞いてみてください。きっとRAWデータってスゴイ!と思って頂けるはずです。