柿の木坂写真工房のランドマーク:琺瑯(ほうろう)看板
地図アプリと“迷子”問題
Google Mapなどの地図アプリを頼りに、柿の木坂写真工房を目指すと──なぜか入口とは反対側に案内されてしまうことがあります。
「到着しました」と表示されたのに、そこに写真館らしき建物は見当たらない…。
日中でさえ「え、場所を間違えた?」「もしかして閉店?」と不安になられる方も少なくありません。
多くのお客様はその場からお電話をくださり、すぐにご案内できたのですが、駅から決して近いわけでもなく、住宅地の奥にひっそりと佇む当工房にとっては、長らく悩ましい課題でした。
そこで六年前、頼みの綱として掲げたのが──我が工房自慢の 琺瑯(ほうろう)看板。
シンプルな住宅街の道筋に、確かなランドマークとして存在感を放っています。
琺瑯という素材の小さな歴史
お鍋やフライパンでよく使われる琺瑯。実はその歴史は紀元前までさかのぼります。
あのツタンカーメンの黄金のマスクにも施されていた、由緒正しき贅沢品。王侯貴族が愛した装飾技法が、19世紀になると日用品へと姿を変え、現代まで受け継がれてきました。
製法はシンプルでありながら奥深いもの。金属の表面にガラス質の釉薬を高温で焼き付けることで、金属の丈夫さとガラスの艶やかさを兼ね備えた独特の質感が生まれます。
耐久性にも優れ、だからこそ現代の目には「どこかレトロで懐かしい佇まい」と映るのでしょう。
福岡・原田琺瑯さんの手仕事
看板制作にあたっては、数々の専門店を比較し、デザイン性と予算を見極めながら検討しました。
最終的にご縁をいただいたのが、福岡の 原田琺瑯さん。
こちらで仕上げていただいた看板には、昔ながらの「剥ぎ取り」という技法が用いられています。
デザイン部分に生まれるわずかな凹みは、光と影をまとい、琺瑯特有の質感に奥行きを与えてくれるのです。
看板デザインへのこだわり
デザインは、私たち自身で手がけました。
予算の理由もありますが、何より「工房の思いをそのまま形にしたい」という願いが強かったのです。
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四辺はやわらかな丸みを持たせること
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ベースカラーは工房のCI/VIに基づいたアイボリーと茶系
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フォントは、格調高い隷書体と、タイプライター時代から愛されるクーリエを組み合わせ
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文字色は、地名「柿の木坂」にちなみ、橙色と茶を採用
こうして仕上がった看板は、派手ではないけれども不思議な存在感を放ちます。まさに「柿の木坂写真工房の顔」として、静かにお客様を迎え続けています。
三つの看板
この自慢の琺瑯看板。ご来房の際は、ぜひ少しだけ目線を投げかけてみてください。私たちの思いがぎゅっと詰まっています。
そして実は、工房にはもう二つ、ひっそりと佇みながら強い個性を放つ看板があります。
それらについては、また別の機会に──。ご来房の折に思い出して探していただけたら、きっとちょっとした“発見”になるはずです。