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今から１０年前の事、その頃まだ会社員だった私は、いつも心のどこかで「どこかにいきたい」と思い続けていました。どこという具体的なイメージはないのですが、「自分が全然知らない場所で、自分の事を誰も知らない一人になれる場所」ヘ行きたかったのです。当時自分にはできすぎた妻と結婚したばかりで平安な日々を送っていて、特に日常に不満がある訳でもなく、収入だって同年代の人と比べて悪い方ではなかった。それでも、そんな日々に何か違和感を感じて、どこかにいきたいという思いは募るばかり。
結局そんな不安めいた観念は、自分の人生設計の漠然さからくるものと結論して、さらば本当にやりたい事をしようと独立して今に至った訳ですが、それまでの悶々とした「どこかにいきたい」という思いを代弁するかのように放送してくれていたのが、大沢たかお出演の「深夜特急」。当時これにハマりました。彼が遥かな地を放浪するのに合わせるように、私は安定した会社員の立場を捨て独立をし、彼がユーラシアやヨーロッパでいろいろは人に出会い、いろいろな出来事をクリアしてゆくのに合わせるように、わたしはこの業界を放浪していろいろな人に出会った。もちろん特に意識して「深夜特急」をトレースした訳ではないけれど、１０年前にもらった強烈なインスピレーションは、今でも忘れていない。
実は、昨日のスカパーで再放送しているのを偶然見つけてDVDに撮ったので、それをみるのが今から楽しみなのです。そしてその興奮を抑えようと駅中のブックセンターで買ったのがこれ。心はすっかり旅人です。帰りの電車で読む事が今から楽しみです。