
授乳フォトを撮影していると、ごく稀に、言葉では言い表せないほど静かで美しい瞬間に立ち会うことがあります。
生まれたばかりの赤ちゃんを胸に抱き、優しく見つめるお母さま。
その姿は、まるで古い絵画に描かれた聖母子像(Madonna and Child)のように穏やかで、どこか神聖な空気をまとっています。
けれど、それは特別に演出された瞬間ではありません。
赤ちゃんを愛おしそうに抱きしめる、お母さまのごく自然な仕草。
優しく語りかける声。
小さな命を慈しむ眼差し。
その何気ない日常の中にこそ、人の心を打つ美しさがあるのだと思います。
柿の木坂写真工房では、ブレストフィーディングフォトの撮影において、お母さまにも赤ちゃんにも、できる限り負担を掛けないことを何より大切にしています。
ご出産直後のお母さまの心と身体は、とても繊細です。
そして、生まれたばかりの赤ちゃんもまた、その場の空気やお母さまの気持ちを敏感に感じ取っています。
だからこそ、無理にポーズをお願いすることはありません。
親子が寄り添う時間を静かに見守り、その場に流れる空気ごと、一枚の写真に残したいと考えています。
写真が写すのは、姿だけではありません。
あの日のぬくもり。
腕の中に感じた小さな重み。
胸いっぱいにあふれていた愛おしさ。
時間が過ぎても、一枚の写真は、そのすべてを静かに思い出させてくれます。
いつの日か、お子さまが成長し、この写真を見返したとき。
「こんなふうに抱きしめてもらっていたんだ。」
そんな小さな会話が生まれるきっかけになれたなら。
写真家として、それ以上の幸せはありません。


