
コロナ禍。
もう、本当に振り回されっぱなしの日々です。
気が付けば騒動から二年以上が過ぎ、「いつか元に戻る」のではなく、「どう共に歩んでいくか」を考えなければならない時期になりました。
そんな中で、写真工房として出来ることは何か。
新しい取り組みの一つとして、大判プリントの出力サービスを検討しています。
自社の商品として展開できるのか。それとも、プリント出力そのものを一つのサービスとして成立させられるのか。
様々な可能性を探りながら、調査と検証を続けています。
そんな折、丸の内のEPSONスクエアで、A1サイズプリンターの実機を体験する機会がありました。
持ち込んだデータは、8年前にヴェネツィアで撮影した「ヴェネツィアン・マスケラ」。
中世、ペスト対策として生まれたあの仮面が、数百年の時を経て世界有数の祭りの象徴となりました。
だからこそ、コロナもきっと乗り越えられる。
そんな願いを込めて、この写真を大きくプリントしてみたいと思っていたのです。
実際に仕上がったA1プリントは、想像以上の迫力でした。
数字では知っていても、目の前にするとその大きさに圧倒されます。
A4用紙のおよそ8倍の面積。
ここまで大きくすると、2400万画素とはいえ、8年前にISO1600で撮影したデータの粗さも正直に表れてきます。
それでも、その存在感には心を動かされました。
この写真を撮影したのは2014年3月。
Leica Mとアポ・ズミクロン75mmで切り取った、水の都ヴェネツィアの記憶です。
大きくプリントされた一枚を眺めていると、旅の思い出が走馬灯のようによみがえります。
「いつか、また必ず行こう。」
そんな前向きな気持ちにもさせてくれました。
一方で、事業として考えると現実は簡単ではありません。
市場はあまりにもニッチで、参入するには設備投資も維持コストも決して小さくありません。
プリンター本体の導入費用、設置スペース、インクやメンテナンス。
冷静に積み上げていくと、希望だけで描く事業計画にはならないことも見えてきました。
今回は、勇気ある撤退です。
しかし、この時間は決して無駄ではありませんでした。
A1サイズに負けない写真を、もっと撮りたい。
もっと大きく飾りたくなる写真を残したい。
そう思わせてくれたことこそ、一番の収穫だったように思います。
withコロナ、そして、その先へ。
どんな時代になろうとも、一つひとつ積み重ねながら歩んでいくしかありません。
100年先、500年先まで残る写真工房。
その礎を、今、スタッフとともに築いている。
私は、そう信じています。


