

今回は、お客様の大切な一枚をキャンバスプリントとして仕上げました。
とはいっても、近年よく見かける「キャンバス風」のエンボス加工が施された写真用紙ではありません。
私たちが使用したのは、ハーネミューレ製の本物のキャンバス生地です。
キャンバスへのプリントは、写真用紙へ印刷するのとはまったく異なる難しさがあります。
生地特有の織り目やインクの浸透具合によって、色の見え方や階調表現は大きく変化します。そのため、美しく仕上げるには専用のカラープロファイルを作成し、数え切れないほどのテストプリントを重ねる必要があります。
一枚のプリントを仕上げるまでには、多くの時間と材料が必要になります。
決して効率の良い取り組みではありません。
それでも柿の木坂写真工房では、「写真を残す」という選択肢のひとつとして、この表現には大きな価値があると考え、この一年、時間を見つけてはトレーニングを重ね、ハーネミューレのキャンバス生地専用のカラープロファイルづくりにも取り組んできました。
改めて眺める本物のキャンバス。
繊細に織り込まれた生地の質感は、写真にやさしい温もりと奥行きを与え、まるで一枚の絵画のような存在感を生み出してくれます。
写真は、データとして保存することもできます。
けれど、こうして作品として飾ることで、ご家族の日常の風景に自然と溶け込み、何気ない毎日の中でふと目に留まる存在になります。
何年後かに、この写真を眺めたとき。
きっと思い出すのは、使ったカメラやレンズの名前ではなく、ご家族で笑い合った時間や、その日に流れていた穏やかな空気ではないでしょうか。
そのかけがえのない時間を、未来へ届けること。
それが、私たち柿の木坂写真工房の仕事だと考えています。


