
ハッセルブラッドでエマルジョントランスファーを作ってみました。
ポラロイドフィルムの供給が年々厳しくなり始めている今となっては、こうした手法もいずれ貴重なものになっていくのかもしれません。
それでも、手間も時間も掛かるアナログ表現に惹かれる人は少なくありません。
もちろん私もその一人です。
便利さや再現性だけを求めるなら、デジタルの方がはるかに優秀です。
思い通りの色を再現でき、同じ結果を何度でも得ることができる。
仕事として写真を撮るうえで、その恩恵は計り知れません。
それなのに、なぜ私たちは時としてアナログの世界へ戻りたくなるのでしょう。
予測できないからでしょうか。
偶然が入り込む余地があるからでしょうか。
あるいは、人は本能的に少しだけカオスを求めているのかもしれません。
ふとそんなことを考えました。
人類が知性を持った頃から、芸術は存在したと言われています。
アルタミラやラスコーの洞窟壁画よりもさらに古い時代の遺物には、生きるためには必要のない模様が刻まれた骨も見つかっているそうです。
食べるためでもなく、身を守るためでもない。
それでも誰かが時間を掛けて模様を刻んだ。
なぜだったのでしょう。
その問いは、「なぜ写真を撮るのか」という問いとどこか似ている気がします。
もし言葉を持たなかった彼らに代わって答えるなら、
「美しいから。」
「楽しいから。」
そして、
「なにかがそうさせるから。」
そんなところではないでしょうか。
デジタル技術はこれからますます進化していくでしょう。
いつか人の技術を凌駕する場面も増えていくかもしれません。
けれど、偶然から生まれる発見や、結果の見えない試行錯誤の面白さまでは置き換えられないような気がしています。
だからこそ、こんな実験が楽しいのです。

エマルジョントランスファーもそのひとつ。
まだまだ試行錯誤の途中ですが、いずれアトリエへお越しくださるお客様にも楽しんでいただけるような形にできればと思っています。
写真には、撮る楽しさだけではなく、作る楽しさもあります。
そんな写真の奥深い世界を、少しずつお伝えしていければと思います。


