
2005年、六本木に最初の事務所を構えた頃の私は、とにかく資金に余裕がありませんでした。
独立したばかりの小さな写真事務所。機材を揃えるだけでも精一杯で、家具や備品にまで予算を回すことはなかなかできません。決して贅沢志向ではない私ですが、それでも「いつかは」と憧れていたものがいくつかありました。
そのひとつが、このトレイです。
無駄のないステンレススチールのフレームに、黒いリノリウムが張られた天板。華美な装飾は一切なく、ただ機能美だけが静かに存在しています。
六本木時代から欲しくて仕方がなかったのですが、当時の雑居ビルの事務所には少々不釣り合いでしたし、何より予算が許しませんでした。
その後、南青山へ移転し、多くのお客様とのご縁に恵まれ、多くのカメラマンたちに支えられながら、少しずつお客様をお迎えする環境を整えることができました。
そして移転を機に迎えたのが、このトレイです。
以来、三年半。お客様へお茶をお出しする際などに、さりげなく活躍してくれています。主役になるような存在ではありませんが、私にとっては長年の憧れが形になった、少し特別な道具です。
もしご来店の際にお気付きになられましたら、ぜひ一言「いいですね」と声を掛けてください。


