Made in Germanyな自由雲台

カメラに興味を持った子どもが、次にぶつかる壁のひとつに、多種多様なアクセサリー類があるのではないでしょうか。私自身で言えば、望遠レンズと三脚がそれにあたります。

FLM

父親にねだって買ってもらった最初のカメラは、Canon A35 Datelux (通称:キャノンナイター、西田敏行さんがCMを務めていました。)でした。今で言うコンパクトカメラですが、当時としてはなかなか本格的な機種です。レンズ交換はできず、露出はオート。ピント合わせとフィルムの装填・巻き戻しは手動という、小学生にはそれなりに高度な操作を求めるカメラでした。

しかし、パララックスという現象を知った頃から、私の心は一眼レフへと傾いていきます。憧れはCanon A-1。ところが高校生になり、アルバイトで資金を貯めても、A-1はなかなか高嶺の花でした。

もう少し頑張れば買えたのかもしれません。しかし同級生たちが「俺はニコン」「俺はペンタックス」「俺はミノルタ」と語り合う中、キヤノン派はほとんど見当たりません。中には渋くリコーを選ぶ友人もいましたが、私の推しは完全にブルーオーシャンでした。誰かに先を越される前に手に入れたい。その勢いで購入したのがCanon AE-1 Programでした。

本音を言えば、A35 Dateluxから脱却したかっただけなので、プログラムAEにはさほど興味はありませんでした。しかし従来のAE-1は少し古く見え、AE-1 Programのスタイルは憧れのA-1にどこか似ていたのです。

しかも当時のキヤノンは、絞り優先AEを主軸とする他社とは異なり、シャッター速度優先AEを前面に押し出していました。鉄道写真に夢中だった私には、これが実に都合が良かったのです。

もちろんレンズも妥協しません。当時の高校生なら標準の50mm F1.8を選ぶところでしょうが、私は無理をしてNew FD 50mm F1.4を購入しました。わずか半段の違いではありますが、その優越感は今でも覚えています。思えば、その後の終わりなき機材遍歴の原点だったのかもしれません。

相当に脱線しましたが、本題です。

カメラの楽しさにのめり込むと、次に欲しくなるのは大抵レンズです。私もさらにアルバイトに励み、シグマの望遠ズームを購入しました。型番は忘れてしまいましたが、70-210mmクラスで開放F値はF4か、あるいはF5.6程度だったと思います。

50mm F1.4と比べてどれほど暗いのか、それが実際の撮影にどのような影響を及ぼすのか、当時の私は深く考えていませんでした。考えたところで、高校生のアルバイト代で買えるレンズには限界があったでしょう。

結果として、暗めの望遠ズームとシャッター速度優先AEの組み合わせによる、見事な手ブレ写真の量産体制が整いました。さらにPLフィルターも手に入れ、ほとんど保護フィルター代わりに常用していましたから、光量的にはますます不利です。

鉄道写真ばかり撮っていたわけではありません。友人、アルバイト先の仲間、家族や親戚。人を撮ることも大好きでした。ところがフィルム時代の手ブレは、デジタル時代のようにその場で確認できません。現像から上がってきた写真を見て初めて失敗に気付くのです。

旅先での風景も、友人との何気ない一枚も、すべて撮り直しはききません。

こうして私は三脚の重要性に気付くことになります。

もっとも、高校生にとって三脚の優先順位は決して高くありません。しかも意外と高価です。それでもブレを防げるならと、Velbonの比較的安価なモデルを購入しました。

正直なところ、レンズを買う時のような高揚感はありませんでした。

「三脚って、なんでこんなに高いんだろう」

そんなことを思いながら持ち帰った記憶があります。

ところが使い始めてみると、その価値に驚かされました。

まずセルフタイマーを使えば、自分自身も写真に写ることができます。それまで撮る側に回ることが多かった私にとって、被写体としての自分を客観的に見ることは新鮮な体験でした。

さらに星空を撮る楽しさも覚えました。

もっとも、200mmの望遠レンズで星を撮れば、地球の自転の影響ですぐに星は軌跡を描いてしまいます。それでも、手持ち撮影では到底不可能な世界がそこにはありました。

しばらく星の撮影に夢中になっていたある日、気になることに気付きます。

三脚を使っているにもかかわらず、星が流れる方向とは異なるブレが写っているのです。

原因究明にそれほど時間はかかりませんでした。まず疑ったのはレリーズを使っていないことです。シャッターボタンを押す振動がブレを生んでいるのではないか。レリーズは比較的安価で、高校生にも手が届きます。

実際、その推測はほぼ正解でした。

しかし撮影を続けるうち、レリーズ由来では説明のつかない微妙なブレが残っていることにも気付きます。

写真仲間に聞いても、近所の写真店で相談しても、明快な答えは得られませんでした。

そして高校生にとっての数年はあっという間です。興味の対象は次々と移り変わり、その問題もいつしか忘れ去られていきました。

やがてカメラマンとして仕事をするようになり、三脚の使用はごく自然な作法になっていきました。

そんなある日、コンタックスRTS IIIに、借り物のカールツァイス 200mm F1.8を組み合わせて撮影する機会がありました。どちらも重量級です。

三脚はGitzoの3型。雲台もGitzo製の上位モデルでした。

ところが撮影の合間にしばらく置いておくと、カメラがわずかにお辞儀をしているのです。

もちろん三脚座はしっかり固定しています。それでも少しずつ角度が変わってしまう。

個体差だったのかもしれません。しかし、その時の私は大きな衝撃を受けました。

天下のGitzoにしてこれなのか。

そして同時に、かつて星景写真で悩まされた微妙なブレの正体にも思い当たったのです。

そこから始まったのが、雲台探しの長い旅でした。

三脚そのものも何本となく買い替えましたが、雲台に至っては数え切れません。

なかでも梅本製作所の自由雲台とクイックシュープレートは非常に信頼性が高く、長年愛用してきました。しかし機材が増えるにつれ、アルカスイス互換システムの利便性が無視できなくなっていきます。

このあたりの遍歴も枚挙にいとまがありませんが、現在たどり着いているのがFLM CB43FTRです。

これに同社製のスタンダードタイプのアルカスイスベースを組み合わせ、気付けばもう5年以上が経ちました。

それまで毎年のように繰り返していた「買っては売り、買っては売り」の雲台選びは、ようやく終わりを迎えています。

自由雲台の魅力は、構図変更の自由度と保持力を高い次元で両立できることにあります。

特に重量級の機材を扱うようになると、わずかな首下がりや緩みが大きなストレスになります。良い自由雲台は、その存在を意識させません。

向けたい場所へカメラを向け、ノブを締める。

すると、その位置でぴたりと止まる。

たったそれだけのことですが、その「当たり前」を確実に実現してくれる道具は意外に少ないのです。

FLM CB43FTRは、少なくとも私にとって、その当たり前を最も自然に実現してくれた雲台のひとつでした。

ちなみに日本ではアガイ商事が取り扱っています。

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