
唐突ですが、タンバールは私が最も好きなライカレンズです。
一見すると、とても柔らかな描写をするレンズです。
けれど実際には、その柔らかさの奥で驚くほど繊細に解像している。
ただ甘いだけではない。
むしろ、静かな緊張感のようなものさえ感じます。
そしてこのレンズには、単なる描写性能を超えた魅力があります。
それは、写真が“今の写真”になる以前の時代、その歴史そのものを写しているように感じられることです。
まだレンズ設計も完全ではなく、光学技術も発展途上だった頃。
職人たちは限られた技術の中で、少しでも美しい描写へ近づこうと工夫を重ねていました。
タンバールには、そんな時代の試行錯誤や、美意識の痕跡が今も残っています。
現代のレンズのような完璧さとは違う。
けれど、不完全だからこそ生まれる表情があります。
ライカのオールドレンズに触れていると、ときどき思うのです。
こんな時代に生まれて、本当に良かったな、と。


