Apo Summicron M 75 f2

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レンジファインダー用中望遠レンズ75mm

 ライカのカメラでは、標準から広角レンズが使いやすく、実際、歩留まりが多いのも事実です。もちろん、絞り値、シャッタースピード、被写体(人や動物など動くものか、物や風景など動かないものか)、被写体までの距離など、条件によってその難易度は一様ではありません。

 しかし、私たちが普段撮影させていただく人物の場合、レンジファインダー機であるライカは、ファインダーの有効視野、そして焦点距離が長くなるほど、厳密さを要求されるピント合わせのシビアさが増し、標準レンズより長いレンズの取り扱いの難しさを、やはり感じさせてくれます。

 M型ライカ用として、現在発売されている望遠レンズは、75mm、90mm、135mmの3本になります。ただし、135mmはマクロレンズなので、少し用途が異なります。そう考えると、実質的には75mmと90mmの2本と言えるでしょう。

 一眼レフやミラーレスカメラであれば、中望遠の範疇となるこれらのレンズは、バストアップのフレーミングでは、被写体から概ね1〜3メートルほどの距離になります。近すぎず遠すぎず、パースも極めて自然になるため、ポートレート用とも称される所以です。

 今回購入したのが、そのうち75mmタイプのApo-Summicron-M 75mm ASPH.です。

 Apoとは、レンズ固有の悪い癖とも言える収差を、レンズの曲率や素材など、あらゆる技術を駆使して徹底的に軽減したレンズに冠される、敬称のようなもの。つまりは、高性能なレンズということです。

 ライカのレンズは、この敬称の付かないものでも、いずれも素晴らしい写りをするので、今回のレンズもとても楽しみです。

ファーストインプレッション 

早速、お友達のHさんにモデルをお願いして、その難しさを確認してきました。ストロボやレフ板は一切使わず、自然光のみです。

 梅雨入りギリギリ前。まだ少しは涼しいこの時期を逃してしまうと、モデルをお願いするのも気が引けてしまいます。f2.8

一つ絞ったf2.8。まつげにピントを合わせるのに、レンジファインダー機ではほぼ運です。

 たくさんシャッターを切り、それも一枚一枚、かなり真剣にピントを確認しながら撮影しましたが、20枚ほど撮って、まつげにピントが合っていたのは3枚。残りは、ほんの僅かにピンボケでした。

 この写真でも、鼻の上、ちょうど陰から直射日光に変わるあたりを見ると、もうピントは来ていません。また、目尻あたりからすでにボケ始めています。

 これで開放のf2.0にすると、どうなってしまうのでしょうか?

 また、このくらいの焦点距離から目立ち始めるフリンジも、ほぼ確認できません。髪の毛に陽が当たって反射している部分、右手に思いきり日が当たっている部分、右肩付近の洋服の白飛び寸前の部分。どこも破綻していません。さすがはApoレンズです。

F2(開放)

こちらは開放f2.0。

 実は、目の真ん中にはピントが来ていません。まつげの一番手前側くらいでしょうか。10枚以上撮ったのですが、これが一番ましでした。

 撮影距離は、ほぼ限界の1mくらい。もう左目のまつげの左端にピントが合っていれば、そこから1センチほど先の目の中央には、ピントが合わないことになります。

 これは、相当にシビアなレンズです。

 実際、仕事の現場で開放を使うのは、大冒険でしょう。

 でも、大冒険という物語なしに、アメリカ大陸も喜望峰もマゼラン海峡の発見もなかったわけですから、冒険をしないという選択肢はありません。

 ただ、現代の利器を保険として、f4、f5.6あたりでのショットも撮っておく必要はありそうです。

 こちらも、開放とは思えない、球面収差が極めて少ないと見られるシャープさ。半逆光、かつレンズ内蔵のささやかなレンズフードのみでの撮影でしたが、ハレーションが出てしまうこともなく、f2.8の時と同様、色収差もほぼ気になりません。

 ボケ味も、やはり50mm M f1.4 ASPH.と比べても明らかに大きく、非常にまろやかに溶けていくようです。

 前ボケでは、髪の毛がカメラに近づくに従って、破綻なく、非常に素直に自然にボケていくのが分かります。

 これは凄いレンズです。

再度f2.8

こちらも戻って、f2.8。

 この写真は、僅かに前ピン。小鼻のあたりにピントが来ています。ほぼ逆光です。

頭頂部の跳ね毛の部分には、美しい玉ボケが発生しています。しかも嫌な色付きもなく、極めて自然で、水玉が反射しているようです。

 一方、もう少しピント位置に近いところ、右耳の上部付近の跳ね毛には、僅かに色収差、もしかしたらフリンジが現れています。

 とは言え、この絵は400%拡大の切り取りですので、重箱の隅をつつくような粗探しと言えるでしょう。

 それよりも、ピントをより慎重に。

 より慎重にという落ち着きと、鍛錬を思い知らされるレンズだということが分かりました。

三度f2.8 おそば屋さんで、やっとジャスピン

おそばを食べるHさん。f2.8。

 これは、きっちり、まつげにピントが合っています。この時は、今回のレビュー用の撮影時より遙かにラフに撮影したのですが、皮肉なものです。

 でも、これがライカ本来の使い方なんですよね。

 ライカはもともと、サクッとスマートに撮影するカメラ。力を抜いたくらいの方が、本領を発揮するのでしょう。

 それでも、この75mm ASPH.、とっても気に入りました。

 エルマリートの90mmも使っていますが、この15mmの差は、ファインダー上では相当に違って見えます。

 ここで言うファインダーとは、ミラーレスや一眼レフのことではなく、ライカのブライトフレームファインダーのことです。

 90mmのフレームなんて、本当に小さい。近距離撮影時の視野率なんて、もう「フレーミング」なんてことは考えてはいけないくらいです。

 でも、75mmだとずっと楽です。

 今後は、タンバールではない方のSummicron-M 90mmの出番は、大分減っていくような気がしてなりません。

M型に付けると少しフロントヘビーな見た目になる

もともとM型カメラ用のレンズに何を言わんや、というタイトルですが、何度か述べているように、ライカの本領は標準から広角レンズでしょう。

 近距離撮影が苦手という大きな課題を考えれば、距離計との相性も、その方がずっと良さそうですし、カメラとセットした時のスタイルもずっとスマートです。

 でも、その呪縛から解き放ってくれるほど良い写りだということは、間違いないと確信しました。

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